(BALB/c-hPD1,C57BL/6-hPD1,BALB/c-hPD1/hPDL1,C57BL/6-hPD1/hPDL1)
PD1(programmed cell death 1)はプログラム細胞死受容体1であり、免疫グロブリンスーパーファミリーI型膜貫通糖タンパク質に属し、重要な免疫抑制分子として、CD28スーパーファミリーの一員です。PD1を標的とする免疫調節は、抗腫瘍、抗感染、抗自己免疫疾患、および臓器移植拒絶反応などに対し、重要な役割を果たしています。多くの研究により、腫瘍微小環境における腫瘍細胞の表面でのPDL1の発現が増加し、同時に、活性化T細胞上のPD1に結合し、負の調節シグナルを伝達して、腫瘍抗原特異的T細胞のアポトーシスまたは機能喪失を引き起こすことで、免疫応答を阻害し、腫瘍細胞の脱出を促進することが確認されました。抗体でPD1/PDL1シグナル伝達経路を遮断することは、腫瘍免疫療法の典型的な方法となっています[1-3]。
構築戦略:集萃薬康はBALB/c及びC57BL/6マウスのPD1細胞外部分を対応のヒトフラグメントに置き換え、マウスPD1の細胞内部分を完全に保持することで、単一ヒト化マウスBALB/c-hPD1とC57BL/6-hPD1及び二重ヒト化マウスモデルBALB/c-hPD1/hPDL1とC57BL/6-hPD1/hPDL1を含むPD1単一ヒト化マウスモデルの構築に成功しました。PD1ヒト化マウスモデルはヒトPD1阻害剤の薬力学的評価と安全性評価のための理想的な動物モデルです。
1.BALB/c-hPD1:KEYTRUDA®+ ENT併用の薬力学的実験
BALB/c-hPD1マウスにCT26.WT腫瘍細胞株を皮下接種した後に、抗ヒトPD1抗体であるKEYTRUDA®(Pembrolizumab)単独及びKEYTRUDA®とHDAC小分子阻害剤であるEntinostat(ENT)併用の腫瘍抑制効果試験を実施しました。
KEYTRUDA®(Pembrolizumab):MRK社が発売した抗腫瘍薬、抗ヒトPD1抗体です。
Entinostat (ENT):Syndax社製の1型HDAC選択的阻害剤であり、HDAC1、HDAC2、およびHDAC3に作用し
左図:マウス腫瘍増殖グラフ 右図:マウス体重変化グラフ
BALB/c-hPD1マウスへのCT26.WT皮下接種モデルに基づくin vivo併用薬実験です。対数増殖期の結腸癌細胞CT26.WTを、6~8週齢のBALB/c-hPD1ヒト化マウスに皮下接種し、腫瘍増殖平均体積が約100 mm3になったときに、無作為にVehicle(対照)群、KEYTRUDA®単剤群、ENT単剤群及びKEYTRUDA®+ENT併用群(n=7-9)に分け、対応の治療薬で治療を行いました。KEYTRUDA®:10 mg/kg;ENT:Entinostat,20 mg/kg。3日に1回、計6回投与しました。データはMean±SEMで示されたものです。
試験結果:KEYTRUDA®またはEntinostat単剤投与時の腫瘍増殖抑制作用(KEYTRUDA®治療群TGI=45.3%,ENT治療群TGI=44.6%)。KEYTRUDA®とEntinostatの併用時に、単剤より高い腫瘍抑制効果(TGI=89.5%)(左図)が認められました。4群マウスの体重変化傾向は近いです(右図)。
考察:BALB/c-hPD1マウスは抗ヒトPD1抗体とその他の治療薬と併用する際のin vivo薬力学的効果を評価するための理想的なモデルです。
2.C57BL/6-hPD1:KEYTRUDA®の薬力学的実験
MC38腫瘍細胞株をB6-hPD1マウスに皮下接種した後、各用量の抗ヒトPD1抗体であるKEYTRUDA®(Pembrolizumab)の腫瘍抑制効果試験を実施しました。
KEYTRUDA®(Pembrolizumab):MRK社が発売した抗腫瘍薬、抗ヒトPD1抗体です。
左図:マウス腫瘍増殖グラフ 右図:マウス体重変化グラフ
B6-hPD1マウスへのMC38皮下接種モデルに基づくin vivo薬力学的試験(KEYTRUDA®)。対数増殖期のマウス結腸癌細胞MC38を6~8週齢のB6-hPD1ヒト化マウスに皮下接種し、腫瘍増殖平均体積が約100 mm3になったときに、無作為にVehicle(対照)群、KEYTRUDA® 0.5 mg/kg群、KEYTRUDA® 1 mg/kg群,KEYTRUDA® 5 mg/kg群及びKEYTRUDA® 10 mg/kg群(n=8)に分け、対応の治療薬で治療を行いました。3日に1回、計6回投与しました。データはMean±SEMで示されたものです。
試験結果:異なる用量のKEYTRUDA®投与による腫瘍増殖抑制程度が違い、10 mg/kg群の腫瘍抑制効果は最も高く(TGI=79.7%)、0.5 mg/kg,1 mg/kg及び5 mg/kg用量の3群の腫瘍体積が近く、TGIがそれぞれ44.7%、58%と56.2%でした(左図)。5群マウスの体重変化傾向は近いです(右図)。
考察:B6-hPD1マウスはヒトPD1抗体の薬力学的効果を評価するための理想的なモデルです。
3.C57BL/6-hPD1:OPDIVO®の薬力学的実験
MC38腫瘍細胞株をB6-hPD1マウスに皮下接種した後、異なる用量の抗ヒトPD1抗体であるOPDIVO®(Nivolumab)の腫瘍抑制効果試験を実施しました。
OPDIVO®(Nivolumab):Bristol-Myers Squibb社が発売した抗腫瘍薬、抗ヒトPD1抗体です。
左図:マウス腫瘍増殖グラフ 右図:マウス体重変化グラフ
B6-hPD1マウスへのMC38皮下接種モデルに基づくin vivo薬力学的試験(OPDIVO®)。対数増殖期の結腸癌細胞MC38を6~8週齢のB6-hPD1ヒト化マウスに皮下接種し、腫瘍増殖平均体積が約100 mm3になったときに、無作為にVehicle(対照)群、OPDIVO® 0.5 mg/kg群、OPDIVO® 1 mg/kg群,OPDIVO® 5 mg/kg群及びOPDIVO®10 mg/kg群(n=6)に分け、対応の治療薬で治療を行いました。3日に1回、計6回投与しました。データはMean±SEMで示されたものです。
試験結果:異なる用量のOPDIVO®投与による腫瘍増殖抑制程度が違い、10 mg/kg群の腫瘍抑制効果は最も高く(TGI=95.0%)、0.5 mg/kg,1 mg/kg及び5 mg/kg用量の3群の腫瘍体積が近く、TGIがそれぞれ73.6%、66.6%と67.5%でした(左図)。5群マウスの体重変化傾向は近いです(右図)。
考察:B6-hPD1マウスはヒトPD1抗体の薬力学的効果を評価するための理想的なモデルです。集萃薬康のB6-hPD1はFDAに承認されたKEYTRUDA®及びOPDIVO®に対し、全て応答できます。
4. BALB/c-hPD1/hPDL1:KEYTRUDA®の薬力学的実験
CT26-hPDL1(Tg)-mPDL1(KO)腫瘍細胞株をBALB/c-hPD1/hPDL1マウスに皮下接種した後、抗ヒトPD1抗体であるKEYTRUDA®(Pembrolizumab)の腫瘍抑制効果試験を実施しました。
KEYTRUDA®(Pembrolizumab):MRK社が発売した抗腫瘍薬、抗ヒトPD1抗体です。
マウス腫瘍増殖グラフ
BALB/c-hPD1/hPDL1マウスへのCT26-hPDL1(Tg)-mPDL1(KO)皮下接種モデルに基づくin vivo薬力学的実験。対数増殖期のマウス結腸癌細胞CT26-hPDL1(Tg)-mPDL1(KO)を6~8週齢のBALB/c-hPD1/hPDL1マウスに皮下接種し、腫瘍増殖平均体積が約100 mm3になったときに、無作為にPBS群,Keytruda(0.3 mpk),Keytruda(1 mpk)、Keytruda(3 mpk)投与群(n=8)に分け、対応の治療薬で治療を行いました。週に2回、計6回投与しました。データはMean±SEMで示されたものです。
試験結果:Keytruda(0.3 mpk),Keytruda(1 mpk)、Keytruda(3 mpk)投与群の腫瘍増殖抑制率(TGI)はそれぞれ43.49%、57.74%、64.67%で、試験抗体は腫瘍の増殖に有意な抑制作用及び特定の用量勾配依存性が認められました。
考察:BALB/c-hPD1/hPDL1マウスは抗ヒトPD1抗体、抗ヒトPDL1抗体及び併用による抗腫瘍作用の評価に利用できます。
5.C57BL/6-hPD1/hPDL1:KEYTRUDA®及TECENTRIQ®の薬力学的実験
MC38-hPDL1(Tg)-mPDL1(KO)腫瘍細胞株をB6-hPD1/hPDL1マウスモデルに皮下接種した後、抗ヒトPD1抗体であるKEYTRUDA®(Pembrolizumab)及び抗ヒトPD-L1抗体であるTECENTRIQ®(Atezolizumab)の腫瘍抑制効果試験を実施しました。
KEYTRUDA®(Pembrolizumab):MRK社が発売した抗腫瘍薬、抗ヒトPD1抗体です。
TECENTRIQ®(Atezolizumab):Roche社が発売した抗腫瘍薬物、抗ヒトPD-L1抗体です。
左図:Keytrudaの抗腫瘍効果;右図:Tecentriq抗腫瘍効果
C57BL/6-hPD1/hPDL1マウスへのMC38-hPDL1(Tg)-mPDL1(KO)皮下接種モデルに基づくin vivo薬力学的実験。対数増殖期のマウス結腸癌細胞MC38-hPDL1(Tg)-mPDL1(KO)を6-8週齢のC57BL/6-hPD1/hPDL1マウスに皮下接種し、腫瘍増殖平均体積が約100 mm3になったときに、無作為にKeytruda (1 mpk)、Keytruda (3 mpk)、Keytruda (10 mpk)、Tecentriq (1 mpk)、Tecentriq (3 mpk)、Tecentriq (10 mpk)投与群(n=8)に分け、対応の治療薬で治療を行いました。3日に1回、計6回投与しました。データはMean±SEMで示されたものです。
試験結果:Keytruda (1 mpk)、Keytruda (3 mpk)、Keytruda (10 mpk) 投与群のTGIはそれぞれ79.63%、96.45%、99.52%で、Tecentriq (1 mpk)、Tecentriq (3 mpk)、Tecentriq (10 mpk)投与群の腫瘍増殖抑制率(TGI)はそれぞれ48.26%、67.77%、88.52%であり、2つの抗体は腫瘍の増殖に有意な抑制作用及び特定の用量勾配依存性が認められました。
考察:C57BL/6-hPD1/hPDL1マウスは抗ヒトPD1抗体、抗ヒトPDL1抗体及び併用による抗腫瘍作用の評価に利用できます。
参考文献
[1] PD1 Blockade with Cemiplimab in Advanced Cutaneous Squamous-Cell Carcinoma. N Engl J Med. 2018, 26;379(4):341-351.
[2] PD1 makes waves in anticancer immunotherapy. Nat Rev Drug Discov. 2012, 11(8):601.
[3] Coexpression of Tim-3 and PD-1 identifies a CD8+ T-cell exhaustion phenotype in mice with disseminated acute myelogenous leukemia. Blood. 2011,117(17):4501-10.